取引先企業を訪れた際、受付で取り次ぎをお願いする際の挨拶としてより適切なのは、次のうちどちらでしょうか?
A:お世話になっております。私、A社から参りました吉田と申します。
B:お世話になっております。私、A社から伺いました吉田と申します。
答え:A
「参る」と「伺う」の使い分け問題です。
どちらも「行く(来る)」の謙譲語ですが、どう違うのでしょうか。
まず、「伺う」は「謙譲語Ⅰ」と呼ばれる型になります。
「御社に伺いたいのですが」「来週火曜日に御社に伺います」などと使います。
謙譲語Ⅰは、自分から相手方、または第三者に向かう行為やものごとについて、
【向かう先の人物】を立てて述べるものです。
「来週火曜日に伺います」と言う場合、「行く」という行為が向かう先は、「御社」ですよね。
御社を立てて「伺う」という言葉を使っているわけです。
一方、「参る」は「謙譲語Ⅱ」となります。
自分側の行為やものごとを、【話相手】に対してていねいに述べるときに使う言葉です。
「私は来週、北海道に参ります」「部長が御社に参ります」など、基本的に自分側に使います。
そのため、この設問の答えはAとなるわけです。
なお、謙譲語Ⅱは、
「あちらからご婦人が参りました」
「タクシーが参りました」
「売上が上がって参りました」などと、
第三者や事物について使うことがあることもインプットしておいてください。
少し意地悪な解説を加えましょう。
設問の設定では「A社から参りました吉田と申します」がモアベターになります。
ただし、誤解を与えないように「A社の吉田と申します」というフレーズのほうが、より適切かもしれません。
「A社から参りました吉田と申します」は文法的に間違いではありませんが、
意味は「A社から来ました吉田です」となり、
たまたまA社に立ち寄って来た場合にも使うことができます。
場所や方向を表す「から」と誤解される可能性があるわけです。
「東京から参りました吉田と申します」でもよいですよね。
そういえば、「消防署のほうから来ました」と言って消火器を売りつける詐欺が流行したことがありましたよね。
本当は消防署の(方角から)来ただけなのに、意図的に聞き手が「消防署の人」と誤解させるような言い回しを使ったようです。
「消防署の人が言うなら」と購入した人も多かったという報道が当時されていました。
自分の所属を明確にするためにも、「A社の吉田と申します」のほうがよりよいフレーズとなるのではないでしょうか。
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